S-070 “little WING | 番外編 | Test Flight ( 5.27 ) ( 6.09 ) ( 6.23 ) ( 6.30 ) ( 7.07 ) | 第25回 鳥人間コンテストReport |

 2000年夏休み直後に各セクション設計者が決定してから,2001年第25回鳥人間コンテストまでを振り返っています.カーボンパイプ購入が大幅に予定よりも遅れてしまったために製作期間が極端に短く,かなり濃密なスケジュールとなって いるので参考になるかどうか分かりませんが,参考程度に日付も付けてあります.
 S-070 “little WING”(通称:リトル)は,“決断”との闘いの日々でした..それは,空力設計から始まり,購入する材料の種類・構造・予定など,小さな事から大きな事まで様々な“決断“に迫られた1年だった気がします.
また,自分が思い描く理想を再現する為に悩み,そして少しずつリトルが形になっていく事を楽しんだ1年でもありました.そんな1年間の“リトル”製作日記です.
2000年9月〜11月芝際

keraが与えられた設計期間です.芝際までにリブマスを作り始められる状態にする事が目標でした.この期間に宮崎には軽量穴付きのリブを,敦には半リブを使ったテストピースを作ってもらいました.“リトル”には,半リブは無理があると判断し断念.そして,軽量穴付きのリブを採用しました.

11月〜2月中旬

この期間中の作業は,ひたすらリブマスを作り,それと平行して主桁のエポ剥しをしていました.
12月12日

荷重試験を実施.“リトル”ではワイヤーが新しく付けられる3番翼を使用しました.途中で,大きな音と共に桁が地面に落ちそうになるハプニングもありましたが,無事に終了する事が出来ました.結果は,ほぼ計算値通りだった様に思えました.それにしても,この試験は心臓に悪いです.

2月〜3月

リブマス作りやリブの切り出し,手焼きカーボンパイプ製作と平行してテストピースを武田達を中心にいくつも作りました.プラモデルみたいに説明書を片手に飛行機を作るのではなく,主翼製作で中心となる武田達に試行錯誤してもらい,思い付くままに実機採用モデルが完成するまで頑張ってました. (その面白さに目覚めて欲しいという,kera個人の独断.迷惑だったらゴメンなさい.)
2月13日

山ちゃん設計のテストピースが完成しました.このテストピースは,副桁を使用する事で冶具よりも正確にリブ付けをする事を狙った設計です.
2月〜

2月16日に今年初のプリプレグシートが到着.
その後は,買い足しを繰り返しながら手焼きカーボンパイプを作り続けました.手馴れてくると「これで商売でもするか!」という程に順調でしたが,途中からパッタリと成功しなくなってしまいました.春になり暖かくなってきたのも原因の1つか?という疑問を残しつつ終了です.S-080でのリベンジに期待です.作ったパイプの種類は,Φ20,Φ30です.
 力に対する繊維方向の特性を少々.パイプに対して,0度方向の繊維は「引っ張りの力」,同様に90度は「圧縮」±45度は「捩れ」に対する力を強化する為のモノです.だから,健吾のように副桁を握りつぶして「ダメじゃ〜ん!!」は,ダメです.
3月中旬

写真は,完成した手焼きパイプによる2番翼・副桁途中にあるΦ30からΦ20に切り換わる部分のパーツです.肉厚5mm以下の木製リングを使って,桁同士のセンターを出しています.リングは,接着時の冶具としても使用できるようにしました.
〜3月16日

リブの切り出しです.リブマスは木製なので撓んでしまいます.写真の様にしっかりとした板を一緒に挟む事で切り出す時に矯正させる方法をとりました.切り出す時に痛感する事が,リブマスを綺麗に仕上げる事の重要性です.少しの凹凸でヒートカッターが引っ掛かりリブのボツを生み,更にリブマスを焦げ付かせてしまうからです.リブマスは,丁寧に・・
左の写真は,リブ切り出しのボツの山です.
リブ総数は,96枚だったのに何枚作ったん
だろう・・・・. 考えてはいけません.
3月中旬

主翼完成度を決めてしまう大きな要素であるリブ付けの開始です.しかし,発注したカーボンパイプ同様にカーボンプレートも,まだ到着していないのでノーマルリブだけでのリブ付けを始めました.“リトル”のリブ付けでは,冶具と製作方法にこだわりました.冶具には,「リブ付けがしやすい床からの高さ」と「水平でない床での作業精度」の2つを求めました.製作時には,水準器を使い冶具にセッティングした主桁と副桁の水平を何度も調べる事でリブの上下に対するズレを防ぐ事を狙いました.
3月下旬

発注したカーボンプレートが到着!!早速,翼接合部のプレートを切り出し,ハードリブのエポ付け準備をしました.切り出し終わった後,ガレージ中の空気と至る所が黒い粉塗れになってました.
〜3月31日

3月24日の時点で,提出用の書類が50%・図面が40%しか終わっていませんでした.それでも書類だけ作ってる訳にはいかないので,作業と平行しながらの毎日でした.結局,提出が最終日となりました.去年に引き続き,3月30・31日は呪われているらしく,「うまく印刷は出来ない!」・「データがとんだ〜!!」などの悲鳴が絶えませんでした.来年こそは,早期提出を実現して欲しいものです.
4月

右の写真は,ハードリブのエポ付けをしています.エポ付けする時は必ず翼を接合させ,翼同士のハードリブに隙間が生じない事を確かめながら,慎重に行ないました.
4月中旬

3月下旬に完成した“実機採用バージョン”のテストピースを基に本格的に主翼製作が始まりました.この時の主翼構成は,後縁に5×15のバルサを使用し,タモツには,Uper20%・Lower25%に5×5をUper60%には5×10のバルサの角材を使用しました.
4月16日

念願のカーボンパイプが届きました.総額160万円.予定よりも大幅に購入カーボンパイプの到着が遅れてしまったため,ここからの作業は時間との勝負になっていきました.
4月27日

書類審査結果が通知され,「人力プロペラ機部門」の出場が決定された記念すべき日です.この日,たまたま予定されていたバーべキューに便乗して騒ぎました.
Golden Weak 合宿 (10日間)

keraと雄太は,予定を考えると家に帰ってる時間が勿体なかったので,部室に泊り込んで飛行機を作っていました.(話し合って決めたのではなく,自然になってしまった感じ・・・) 2人ともガレージ内を占拠してしまう様な作業内容だったので,予定と場所の確保を毎日練り直していました.合宿中の作業内容は,フレーム組み上げ,その準備と各パーツの製作,まだ完成していなかった3番翼のリブ付け,届いたカーボンパイプによる0番翼製作の為の準備,主翼副桁の製作とエポ付け,各部位の図面を仕上げる・・・等です. 飛行機をもう1回作りたいとは思っても,この合宿だけは2度とやりたくないと心底思いました.
G・W合宿 8日目

珍事件勃発!!ハードリブ付けを手伝ってくれた山ちゃんによる犯行です.左上の写真に違和感を感じますか?  そう,副桁が何故かラックの内側を通ってるのに気づきましたか?左下の写真は,ラックを切り刻み証拠隠滅中のものです.
なかなか笑えました.
G・W合宿 9日目

購入した0番翼用のカーボンを設計値に切る為の罫書きをしています.これを間違ってしまうと大変な事になるので,何度も何度も図り直しました.
 プレッシャーのかかる作業です.
G・W合宿 9日目

念願だったフレームを組み上げました.起こるであろうと予想していたハプニングもなく順調に作業は進み,見事完成しました.これも,パイプ到着待ちの間に万全の準備を整え,試行錯誤した成果だと思います.僕は,その仕上がりに感動し見とれてしまいました.
 この日,雄太は凱旋帰宅しました.
5月上旬

山ちゃんの設計・製作の“ひょろペラ”(細身のスラっとした形状のブレード)がリブ付け段階です.テストピースで試した方法を採用し,冶具を使わない副桁での位置決めをしています.従来のT.B.T標準規格の冶具を使用した精度に納得できなかった為に考案された方法です. 桁には,根元にΦ18のアルミ(この部分にも手焼きカーボンを使いたかったけど,実現できず・・・),Φ18の手焼きカーボン,カーボン製ゴルフクラブのシャフト(安価)です.
5月中旬〜下旬

“ひょろペラ”のバルサによる外皮を製作し,サンディングシーラーを6層塗り重ねました.(ニスの様な物で,重ね塗りすると外皮が硬くなります) そして表面仕上げをした後,“ひょろペラ”ではスプレーの塗装で仕上げました.従来のペラはフィルムを使用していたのですが,フィルムによるシワを嫌い,そして性能に明らかな差がないと判断したので塗装にしました.
5月中旬

ガレージ内にフレームをロープで吊るし,フレーム各部のパテやクロスによる補強です.この補強作業というのは,重量増加に反映してしまう自分との闘いです.
“リトル”のフレームの特徴の1つである偏芯型のB・B(通称:Y・H・B・B)です.これは,"いかろすぅ”駆動系担当の紺田さんと雄太の合作です.機能としては,チェーンのテンションをB・B自体で位置でとり,テンショナーがいらない優れ物です.
左の写真は,PCDアダプターです.パイロットの足回りからプロペラシャフトに繋ぐチェーンの伝達機能を果たしています.三角形の板と輪ゴムはテンショナーです.この機構は,“にわとり"時代から引き継がれている構造となっています.
5月22日

4号館2階で,ロープで機体を吊るし,“リトル”では初めての重心取りをしました.結果は設計値とほぼ違いがなく,満足いく結果でした.
5月下旬

ビーム&尾翼接合部が完成しました.“リトル”の尾翼接合部は,巨大な尾翼の土台となるのでV字構造の安定感を求めた設計としました.
6月1日

学館前での主翼を接合した始めての走行試験です.完成したフレームの走行具合を確認する事を目的としました.初めての事だったので,準備に時間が結構かかりました.
上記の走行試験・一発目で,段差に耐えられなかった前輪が大破し,そのままAピラー3cm程を地面が削りだし試験終了となりました.“リトル”最初の損傷です.
6月上旬

須貝ちゃん&麻衣ちゃんの合作による“でかペラ“(地上高を最大限に生かしたペラ)は,リブと中詰するスタイロのヒートカッターによる製作に追われている段階です.後縁部分は,軽量化も兼ねてカットしてあります.
6月8日

2ndテストフライトを明日に控え,徹夜でのトラック収納用ラック(通称:ケラ・ラック)の製作です.“リトル”の翼は,非常にデカイので本当に入るのか非常に不安でしたが,なんとかギリギリで収納可能でした.
6月

テストフライトを繰り返す大変な時期に突入です.主翼の作り方も当初とは,変わっていきまいた.綺麗に貼る為にスチレンペーパーをロール方向とは逆に使う工夫をしたり,タモツも全て5×10に入れ替えたりと構成材料も変わっていきました.あと,カッターを使う時は定規を使用と決めても,なかなか守らない捻くれ者も現れていました.
6月16日

“でかペラ”の冶具もほぼ完成.冶具は,T.B.T標準規格(取り付け角通りに傾いた板の上にリブを乗せ,桁を固定する)でした.
6月16日

冶具の完成と同時にリブ付けを開始.リブと中詰用のスタイロを同時にエポ付けするのは結構難しく,時間も掛かり四苦八苦していました.
 桁には,手焼きカーボンとゴルフクラブのシャフト,釣り竿を使用しています.
6月下旬

厚さ2mmのバルサによる外皮作り.“にわとり”時代から"リトル”の3種類のペラまで全て同じ構造をしています.この後,バルサのみの状態で4thテストフライトに登場しました.補修を加えフィルムによる外皮を完成させた後,5thテストフライトに臨みました.
6月下旬

悟の設計・製作によるペラ“光☆合成”です.悟は,3月から夢のカーボンペラを実現させようとテストピース作りに励んでいました.しかし,外皮に使うカーボンプレートを作り事までは成功したのですが,自分の意図通りの形状に仕上げる事ができずにいました.そして,6月下旬頃にカーボンペラを諦め,高剛性をコンセプトにペラ製作を開始しました.実現は出来ませんでしたが,カーボンペラへの挑戦は今後に繋がる有意義なものだと思いました.
7月上旬

プロトタイプのフェアリング作りを開始しました.
今回の設計を担当したkeraは,“にわとり”にも“いかろすぅ”にも製作段階で関わった事が一度もなかったので,プロトタイプを作り図面の不備を確かめる事を目的としました.
7月上旬

“光☆合成”も形になってきました.外皮作りのバルサをエポ接着により,剛性を出すことを狙いました.この後,フィルムによる外皮整形を行い完成です.
7月20日

 4回目となった“リトル”最後の走行試験です.
“光☆合成”とプロトタイプ・フェエアリングを装着しての試験です.当初の予定では,ペラの色は緑系の予定だったのですが手に入らなかったのが残念でした.フェアリング側面の「気合かい?」の文字が光ってます.
この走行試験の目的は,宮崎作の計器類の性能試験とフェアリング構造の確認を目的にしています.
7月下旬

全てのテストフライト終了後,大会プラットホームでの離陸を考え,中輪を付けました.
7月25日

完成した本番モデルのフェアリングパーツを琵琶湖でのスムーズな製作を目的に完成直前まで組み立てました.4tトラックでは,フェアリングを装着したまま輸送はできないので,この後,パーツ単位まで分解しなくてはいけません(涙)

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